脉診流経絡治療とは

当治療室では、脈診流経絡治療を行います。12本の『気』の流れを良くするのですが、ではどうやって脈を見て総合的に治療を進めていくのでしょう。脈診流といっても、脈ばかり診ている訳ではありません。はりをする前に準備段階があります。

東洋医学的に『四診法』という、総合診断をするうえで重要な診断法です。

望診:
姿勢や顔色を見て診断します。
聞診:
声の質を診る、においはあるのかを診断します。
問診:
睡眠の質や食欲、お通じなど、診断に大切な生活リズムなどを把握し診断します。
切診:
腕や足のつや、張り感、冷えなどを診ます。また、お腹にも訴えている症状の状態が現れているので診断の情報になります。

4番めに切診とありますが、東洋医学では手指や手掌を直接触れて診察する方法のことをいいます。西洋医学の触診と同じ意味を持っています。

この様な段階を経て、総合的な診断を行い、はりやお灸を使って治療を進めていきます。

「脈診流」経絡治療ですので『脈を診る』ということに重点を置いていますが、もうひとつ『腹診』といってお腹も診させてもらいます。お腹も重要な診断になります。お腹には12本の川の流れが集中して流れていて、よどみが出ている川の場所が現れているのです。お腹を触る時はぐいぐいと圧すような触り方ではなく優しく触ります。ぐいぐい診てしまうとよどみが現れている所がどの川なのかわからなくなってしまうからです。そして最後の最後に脈診を行い、お一人お一人の治療方針がたちます。

大まかですが、この流れが脈診流経絡治療になります。

お腹の診方や脈の捉え方は非常に繊細ですし、鍼の優しく細かな技術を必要とします。毎月脈診流の学会に参加し技術向上と研究に努めています。

腹診

腹診お腹を見せることに抵抗がある方は多いかと思います。しかし、総合的に診断する中で大事な情報となります。

図の中に『肺』や『腎』という言葉が書かれています。これは、身体に流れる『気』と同じで、お腹にもよどんでいる川の場所を教えてくれます。

ご自身で診て「あれ?ここが硬いからおかしいかも!」ではありませんし、私が「肝の場所が硬いですね」と言っても『肝臓が悪い』のではありません。身体に流れる『気』の川の『よどみ』とお腹に現れる『気』の『よどみ』はセットで診ています。

脉診

さて、脈診流経絡治療の1番最後に診るのが「脈」です。身体の『気』の川が12本あるのと共に、脈にも12本の川を診る12個の場所と深さがあります。

脉診

この様に12個の見どころがあります。またまた『肝臓』『肺』と書かれています。お腹にはなかった『胆』『小腸』もあります。

お腹と同じですが、「『腎臓』と『肺』のバランスが崩れていますね」と言われても、それは腎臓と肺の病気ではなく、『腎』『肺』という『気』の川のバランスが崩れているということです。誤解のないように注意してください。

陰陽のバランス

前の脈診の図に『肝・心・脾・肺・腎・心包』と『胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦』と書かれていますね。これは五臓六腑を表します(「心包」をのぞく)。

五臓:
肝・心・脾・肺・腎
六腑:
胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

五臓は陰、六腑は陽と言われ、陰陽のバランスを診ます。川の流れる気の変化がお腹や脈に現れ教えてくれます。

陰陽は、日が当たるか当たらないかという所から発生してきました。男女でも陰陽はあります。男が陽、女は陰です。陽は積極的に動くもの、外向性や温熱的、明瞭のもの。陰は相対的に静止したもの、内向的、寒冷的、暗いもの。という様に物事は全て陰陽の両側面に無限に分けることができます。

お腹が痛いと背中に張り感が出ていたり、足が冷えていると頭の方が熱くなっていたりと、陰陽、上下、表裏のバランスが崩れていると、身体の気の川にもよどみが現れ症状となって身体に違和感をもたらします。

それが全てにおいて、気の川・お腹・脈に現れ、4段階の診断方法を用いて診察、総合的に診てようやく脈診流経絡治療ができるという訳です。

継続治療が効果的です

脈診流経絡治療を1回受けて、「ん?あんまり変わらないかな」と感じても、身体の表面を流れる『気』には変化が出ています。

はりというと即効性があってすぐに治るという話を耳にしますが、慢性症状の場合は、治療を重ねていかなくては良くならない症状もたくさんあります。

治療を重ねることで、身体にもともとある力(自然治癒力、免疫力)が向上していきますので、「そういえば良く眠れるようになったなぁ」とか「いつの間にかだるくならなくなったなぁ」と感じる時がやって来ます。諦めずに治療を続けることがおすすめです。